障害年金と老齢年金は同時にもらえる?「1人1年金」の原則と65歳からの併給ルールを解説
日本の年金には「1人1年金」の原則があり、障害年金と老齢年金を同時に満額ずつ受け取ることは原則できません。ただし65歳以降は特例として一部の組み合わせが可能になります。年齢ごとのルールと、損しないための選び方をFP3級の視点でわかりやすく整理します。
- 「1人1年金」の原則により、異なる支給事由の年金は原則として同時受給不可
- 60〜64歳は障害基礎年金か特別支給の老齢厚生年金のどちらか一方を選択
- 65歳以降は3つのパターンから最もおトクな組み合わせを選べる
- 「障害基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせが最も有利になるケースが多い
- 65歳前に老齢基礎年金を繰上げすると、障害基礎年金の請求に制限が生じる
- 65歳到達前に届く「年金受給選択申込書」は見込額を比較してから返送する
「1人1年金」の原則とは
日本の公的年金には、支給事由ごとに異なる種類の年金が存在します。大きく分けると「老齢(高齢になったとき)」「障害(病気・ケガで障害が残ったとき)」「遺族(加入者が死亡したとき)」の3種類です。
原則として、これらは同時に満額ずつ受け取ることができません。これを「1人1年金の原則」と呼びます。
📌 例外は65歳以降の特定の組み合わせのみです。「いつ」「何と何を組み合わせるか」によってルールが大きく異なるため、年齢ごとに整理して理解することが重要です。
60〜64歳のルール|「支給事由が違う年金」は重ねられない
60〜64歳の段階では、「1人1年金の原則」が厳格に適用されます。ポイントは支給事由が異なる年金は重ねられないという点です。
たとえば障害基礎年金(支給事由:障害)と特別支給の老齢厚生年金(支給事由:老齢)は支給事由が違うため、両方同時には受け取れません。この2つのどちらかを選ぶことになります。
一方で、障害基礎年金と障害厚生年金は支給事由が同じ(どちらも障害)なので、60〜64歳でも一緒に受け取ることができます。
| 組み合わせ | 支給事由 | 60〜64歳 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 障害基礎年金+障害厚生年金 | どちらも障害 | 併給OK | 同一支給事由のため |
| 障害基礎年金 or 特別支給の老齢厚生年金 | 障害 vs 老齢 | どちらか一方 | 支給事由が異なるため |
| 老齢基礎年金(繰上げ)+障害基礎年金 | 老齢 vs 障害 | 同時受給不可 | 支給事由が異なるため |
📌 「どちらか一方」とは「障害基礎年金か特別支給の老齢厚生年金か」という選択のことです。「障害年金と老齢年金のあらゆる組み合わせが不可」という意味ではありません。支給事由が同じであれば60〜64歳でも併給できます。
なお、特別支給の老齢厚生年金と障害基礎年金のどちらを選ぶかの判断目安は以下のとおりです。
| 選択肢 | 金額の目安 | 課税 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 障害基礎年金(2級) | 約81.6万円/年 | 非課税 | 1級なら約102万円/年 |
| 特別支給の老齢厚生年金 | 人によって異なる | 課税対象 | 金額次第では障害基礎年金より少ない場合も |
📌 多くのケースでは、金額が固定されていて非課税の「障害基礎年金」を選ぶ方が手取りで有利になります。ただし個人の状況によって異なるため、年金事務所で試算を依頼するのが確実です。
65歳以降のルール|3つのパターンから選ぶ
65歳になると年金制度が「基礎年金(1階)+厚生年金(2階)」の2階建てに再編されます。このタイミングで特例として、異なる支給事由の年金を組み合わせる「併給」が一部可能になります。
具体的には、以下の3つのパターンから最もおトクな1つを選びます。
パターンCが有利になる理由
「障害基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせは、「しっかり働いて保険料を納めてきた人が損をしないための仕組み」です。
2級の障害基礎年金は老齢基礎年金の満額と同額、1級なら1.25倍の金額になります。また障害基礎年金は非課税のため、所得税・住民税がかかりません。
老齢基礎年金の代わりに障害基礎年金を1階に置くことで、ベース額を高く保ちつつ税負担も抑えられます。
老齢厚生年金は現役時代の給与水準と加入期間に比例して計算されます。長く働いて保険料を納めた分だけ受取額が増えるため、厚生年金加入期間が長い人ほど恩恵を受けやすい組み合わせです。
なお老齢厚生年金の部分には所得税等がかかります。
過去に国民年金の未納期間や免除期間があり、老齢基礎年金が満額に届かない人の場合、1階部分に老齢基礎年金を置くよりも障害基礎年金(固定額)を置く方が総受給額が高くなるケースが多いです。
65歳時点での手続きの流れ
65歳の誕生日が近づくと、日本年金機構から「年金受給選択申込書」が届きます。自動では切り替わらないため、自分でパターンを選んで返送する必要があります。
- A・B・Cそれぞれの見込み受取額を書面で確認する
- 非課税枠(障害基礎年金の部分)も含めた「手取り額」で比較する
- 判断が難しい場合は年金事務所で個別試算を依頼する
- 最も有利なパターンを選択して申込書を返送する
⚠️ 書類が届いても手続きをしないと不利な年金がそのまま継続される場合があります。65歳前後は必ず書類を確認し、見込額を比較した上で返送しましょう。
要注意:繰上げ受給のペナルティ
65歳前に老齢基礎年金の「繰上げ請求」をしてしまうと、年金額が恒久的に減額されるだけでなく、障害年金の扱いにも重大な制限が生じます。
| 繰上げ後に生じる制限 | 内容 |
|---|---|
| 事後重症による障害基礎年金の請求不可 | 繰上げ後に障害状態になっても障害基礎年金を新たに請求できない |
| 寡婦年金の受給権が消滅 | 繰上げ時点で寡婦年金の受給権が失われる |
| 取り消し不可 | 繰上げ請求は一度行うと撤回できない |
⚠️ 「少しでも早くもらいたい」という気持ちから安易に繰上げ請求をすると、後から障害状態になった際に大きなデメリットを受けます。特に若いうちは慎重な判断が必要です。
まとめ:年齢別の選択ルール一覧
| 年齢・状況 | 選択できる年金 | ポイント |
|---|---|---|
| 60〜64歳(同一支給事由) | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 支給事由が同じなので併給OK |
| 60〜64歳(支給事由が異なる場合) | 障害基礎年金 or 特別支給の老齢厚生年金 | どちらか一方のみ。多くの場合は障害基礎年金が有利 |
| 65歳以降(パターンA) | 障害厚生年金+障害基礎年金 | 障害厚生年金が高い場合に有利 |
| 65歳以降(パターンB) | 老齢厚生年金+老齢基礎年金 | 基礎年金が満額に近い場合に有利 |
| 65歳以降(パターンC) | 老齢厚生年金+障害基礎年金 | 未納期間あり・長期加入者に有利なケース多 |
おわりに
障害年金と老齢年金の併給ルールは、FP3級でも出題される重要テーマです。特に「65歳で何が変わるのか」「パターンCが有利になる理由」をセットで押さえておくと、試験対策としても実務知識としても役立ちます。
どの組み合わせが最もおトクかは個人の年金加入歴・収入・未納状況によって異なります。65歳を迎える前に年金事務所で個別に試算してもらうことを強くおすすめします。
※本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。年金制度・受給額は毎年改定される場合があります。最新情報や個別の試算は日本年金機構または年金事務所にご確認ください。